八千代銀行

姪っ子のエデンは
大学で関西へやってきた


いま、一人暮らしだ



気が向いたら
時々連絡してみる


「お小遣い、たりてる?」
聞いてみた


とくに小遣をあげようと
考えてるわけではない


聞いてみただけ


「やばい、あと800円くらいしかないよ」
返事がきた


そんなときは
祖父母を頼るものだと
教えてあげた


たいていわたしは
誰にもなにもしてあげない


そうする能力がないし
したいともおもわない


ただわたしには
とてつもない巨大ネットワークがある


そのネットワークから
そのお悩みには
誰を頼れば解決するか


ピピピ!
とコンピュータのように
答えがはじき出てくる



わたしが大学生の20才のとき
ときどき
彼女と同じく
お金が1000円を切ったものだ



そんなとき
わたしは
新宿のじいちゃんちへ行った


京王線
めじろ台から新宿までの片道料金を
ピピピと計算し

それから
残りのお金で
伊勢丹地下にて
あんみつか葛湯かようかんなど和菓子を買う


それもってじいちゃんちへいく

じいちゃんは
新宿2丁目で
バーバーハヤフジを営む


そして
タオルの洗濯や
蒸しタオルを手伝ったりする


すると
帰りにそっとじいちゃんは
わたしにお小遣いをくれた


いつも一万円をくれた
大金である


「チイちゃん、これ」
って言いながら
じいちゃんはいつもお金をくれた


こどものころは
「小学3年生」や
「小学6年生」といった
わたしの学年にあわせた雑誌をくれた
じいちゃんは会うたびくれた


わたしは
そのため
毎号欠かさず読んだ


これらの付録で社会や理科の勉強も覚えたと記憶する


それから
じいちゃんがいつもくれたのは
八千代銀行のポケットティッシュ


わたしはおかけで学生時代
ポケットティッシュに困ったことは
ただの一度もなかった



それから
ガーゼのハンカチも
束でくれた


おかげでいまでも
ガーゼのハンカチをみると
じいちゃんを思い出す



じいちゃんがわたしに与えた影響は
はかり知れない