トラピスチヌクッキー
スミオカくんは
大学のときの友人だ
正確には
友人であるワダくんの友人だ
2人は熊本出身だ
スミオカくんは映画監督を目指してた
編集が一番大変なんだと言っていた
25才のとき
私はクミと暮らしてた
ある日我々は
画期的な電化製品を購入した
テレビが録画できるビデオだ
これで
風呂にはいっていても
その時間放映中のドラマがみれる
仕事へいっていても
昼間の再放送ドラマがみれる
熱狂してたアメリカ横断ウルトラクイズは
100万回でも繰り返しみれる
まさに夢の製品
そんなある晩
スミオカくんとワダくんが
遊びにやってきた
私たちはテレビの前に集い
いかすバンド天国という番組をみた
たまという名のグループが
「ロシヤのパン」を歌いはじめると
スミオカくんは
すぐさま我々の伝家の秘宝で
歌を録画したのだった
そして
「いいよなぁ」
「もう一回いい?」
と言いながら巻き戻した
歌が終わるたび
「もう一回」といって
巻き戻し何度も
繰り返し繰り返し繰り返し聞いた
そんなふうに「ロシヤのパン」
スミオカくんにつきあって聞いてたら
夜も更け
ぼんやりしながらも
歌詞をなんとなく覚えたのだった
のちに
北海道へいったとき
歌の中にでてきた「トラピストクッキー」
買って食べた
歌にはでてこなかったけど
「トラピスチヌクッキー」も買って食べた
おいしかった
きっと修道の人たちの
祈りが込められてるからだと思った