斉藤投手

高校3年生

学校行く前
庭で石拾ってたら
「おはよ、がっこ行こ」
隣のイクミちゃん誘い来た
私とイクミちゃんは隣同士で同じ学校
「なにしてるん」
「石ぶつけんねん
 よさそうな石イクミちゃんも拾ってよ」
「よし」
ふたりはよさそうな石
スカートのポケットにいっぱい詰めました
学校向い歩き出し
観音池公園過ぎた頃
チャリのった男子生徒が追い抜いた
「アイツだ」
私は彼の背中めがけ
石をがんがん投げた
一発ジャストミート
「よっしゃー」
イクミちゃんも一歩遅れて石投げようと
構えた
そのとき
彼が振り向いた
私はさっとしゃがみ顔をかくしました
イクミちゃんはちょうど
ボール投げようとしてる投手の格好のところで
彼と目があった(と言っていた)
彼はイクミちゃんを
不思議そうな顔でみつめながら
ちゃりでいってしまいました
「ちょっと、今の私のせいになったんとちゃうん?」
「そだね」
「ヤダ、なんで私が。それよりアレ誰よ。なんで石なげるん」
アレはヤマモトくん
ラグビー部の男
クボちゃんが映画「キリュウ院はなこの生涯」
みてきてパンフレットみせてくれた
セクシーショットに「きゃー」「きょー」
いってたら
ヤマモトくんが
「うるせいぞハナコッ」
ってはなこってそれから
ヒトをそう呼ぶんや
頭きた
でもでかくてこわいし
せめて石投げたった
ガタイでかいから石当たりやすかったね
ははは
それから2年後
タブがうちに遊びきた
「これからデートやねん
 ここまで迎えにきてもらう」
車でむかえにきたのは
ヤマモトくんだった
「こんちわ」
彼はおぼえていないらしい
「バイト代はいったんでおごったる」
とわたしにまで串カツを御馳走してくれた
「おじゃまむし」
タブは言ったがたらふくたべました
うまかった