あんず

ピンク色


顔色よく見せるだけでなく
皺やシミも目立たせない


そんな効果あるらしい


そういえば


似合うカラーチェック
ステキなエビさんに
してもらったことがあったっけ


「ハヤフジさんに合うのは
淡いピンク色
淡いタマゴ色です
春のイメ〜ジ」


そう診断されたのだ


そうかピンクか
ピンクだろう


さっそく
薄桃色と浅黄色
コーディネートできめてたら


「あの人みたいだ、えーとﾎﾗ」


夫が言った


「ウインブルドンで
ネットにひっかかったボール
身をかがめ
猛ダッシュで
取りに走る人」


ふうん
ウインブルドンなんて
夫はいつどこで見てるのか


「え？知らない？
こうして
こんなかっこで
こんな風に
ホラ
めっちゃダッシュでボールとって
またコートの外にダッシュで戻るヒト」


そういって
背中まるめて
足をめっちゃ動かした


「え？ウインブルドン、テレビで見たことないん？」


ないよ
そんなの




テレビと言えば
番組表を見ていたら


あ！
忌野清志郎さんの特番をやってるじゃないか


ブラジルにいるクミがファンなんだ


録画しといてあげよう


リモコン操作していると
「予約と重複します
録画を続行しますか？」
メッセージがでた


夫がF１を予約しているらしい


F1とか激Gとか
夫は必ず録画し鑑賞する


どの番組のどの場面も
いつも同じだ
車がヒューヒュー走ってる


特にかわったことはおこらない


そんな番組
夢中で見ている夫を見ると


私はいつも
黒沢明の映画「乱」
思い出すのだ


戦い場面が続き
退屈で眠ってしまう


目覚めると
まだ戦っている


また眠って目覚めると
まだ戦っている


乱は
いつも戦ってる


F１は
いつも走ってる


特に見なくても
きっとなんだかわかるだろう


そんな感じ


ところで
指が砂糖まみれです


松の木に住む叔父が
干しあんず
送ってくれたのだ


清水甘納豆のあんず


あまくすっぱく
指についた砂糖の粒を


「ほら」と見せて
なめました


ぺろぺろ