アサくん

中学3年の冬


豊中駅前銀座商店街に
31アイスクリームの店ができた


私が初めて食べたそれは
チョコミント


画期的な味だった




高校生になると


電車通学者は
座商店街が通学路


私は
徒歩通学だったが時々
腹がへれば
家を通り過ぎ
電車組の仲間と
商店街へ向かうのだった


その日も
我々は31にて
ちょっと一服


店へ入り
注文の段になると
私はいつも混乱する


シングルたのむだけでも


どれを選ぶかめっちゃ悩むのだ


チョコとバニラとストロベリーだけなら
悩みも3分だが


なんといっても


手前から
ひとつひとつチェックしたとして


一番奥に到達する頃は
手前のアイスがなんだったか


忘れてる


ましてや
ダブル注文とならば


それこそ
1段目と2段目の組み合わせ
確率の問題とくように
緊張します震えます




さて


今日は
思い切ってダブルだ、よしと


うだうだしながら
確率の問題解いてると


中学んときの同級生アサくんが
店にスーッと入ってきた


わき目もふらず迷いなく


「ロッキーロード、トリプルで」


彼は注文した


私は驚いた


それが
どの程度の衝撃だったかというと


あれから30年という年月にも負けず


未だ31をみれば
アサくんとロッキーロードとトリプル


思い出すほどのヘビー級である


アサくんは
3段重ねのそれを


ベンチに腰掛け
ペロリとなめて食べ終り


未だ決められないでいる私に向かい


「お、ハヤフジ、お先に〜」


去って行ったのだった


31がある限り
アサくん
ずっと記憶ん中