レモネード

ミツくんから
電話がかかってきた


「もしもしハヤフジさん?」
あ、ミツくん?
「うん、あのな、ソフィーちゃんちの前でお店だしてるっていうから一緒にいこ」


ミツくんはチビリンコのクラスメートだ


チビリンコと間違えて私を誘った
我々は声がちょっと似てるのだ


電話にて
間違えられて誘われるのは
46年間の人生において
これで3度目


1度目
大学生のとき
妹と間違えられデートに誘われる


2度目
花のOLんとき
内線電話にて
後輩のサイトウ嬢と間違えられ
「一緒に山登り行こう、ね、ね、ね」
鋼板2課の男性社員から誘われた


3度目
ミツくんにソフィーちゃんとこ
一緒にいこうと誘われた


そこで


ミツくん
チビリンコは今出かけてていないから
おばちゃんが行ってもいい?


「あ、ハヤフジさんのお母さんやったん」
「うん、ええよ」


それでさっそく
ソフィーちゃんちの前に行ってみた


ソフィーちゃんは
隣のリサちゃんと
家の前にテーブルだしてた


その上に
お菓子とレモネードとコップが置いてある


「おかし 1っこ 10えん
レモネード 1ぱい 30えん」


「お金は東日本大しんさいにきふします」


なるほど


私とモットチビリンコとミツくんはお菓子を買った


買ったお菓子を食べてると
同じクラスのオガワくんが通りかかった


「おーい、おーい」と彼を誘うと
彼はレモネードを注文した


おいしそうにごくごく飲むので
レモネードの感想を求めると


「ぼくな、いまムネがざわざわしてたんやけど」
「これ飲んだらすっきりしたわ」


レモネード
おかあさんの手作り
すっきりさわやか
初夏の味