ウメツ研究室

暑い


ゴキブリが今年もついに家に出現した
きゃあああああああ〜と
叫ぶものの夫がいなければ
チビリンコとモットチビリンコは逃げまどい
即戦力は私しかない


ゴキブリはかなり弱ってる
それもそのはず
私は家中にホウ酸団子をおきまくってるのだ
それをヤツは食べてすでにフーラフラだ
そんな状態で目の前に現れたのだから
勝算は我にあり


もちろん勝利だ


ホウ酸団子の技は
相模原の大学に通っていた時
研究室にいた助手の先生から教えてもらった
それから毎年ホウ酸団子を家中に置いている


あれは15年ほど前のことだ
ウメツ研究室には
教授のウメツ先生と助手のヤノ先生がいた
そして学生メンバーの中で私が室長になったのだった


室長の役目は主に
メンバーや先生からちょっとした会費を集金し
それを管理することだ
そして時々菓子やコーヒーなどを買ってくるのだ
まぁ、雑用ではあるが
好きな菓子を好きな時に好きなだけ購入できる役である
室長だから誰よりも長い時間を研究室ですごし
みんなのお金でかった菓子やコーヒーを誰よりも飲み食いした


室長になって2ヶ月ほどすぎようとした6月に
ゴキブリが研究室の中を走った


この光景をみて
「コスガくんが室長の時はゴキブリなんて1匹もいなかった」
助手のヤノ先生が私に言った


コスガくんていうのは前室長の名前である


どうも私が室長になったとたん
菓子をばりばりたべ
ボロボロこぼし
そこにゴキブリが寄ってきたのだろうか
このままではゴキブリ研究室になってしまう予感がした


「どうしましょう」
私は助手先生にたずねた


「ホウ酸団子をおいたらいいよ」
ヤノ先生は親切に教えてくれた
「コスガくんはそうしてたよ」


そこで私はダッシュで薬局に行き
ホウ酸団子を会費で購入したのであった


集めた会費が私に食べられる菓子だけでなく
はじめて有意義に使用されたのだった


ホウ酸団子を置くと
本当にゴキブリはぱったり姿をみせなくなった


きっと
ホウ酸を食べてよろよろと隣の研究室に退散していったのであろう


よかったよかった


めでたし