くも

うちには蜘蛛がたくさんいる


10匹はくだらないだろう
20匹いるかもしれない


モットチビリンコの友達が遊びに来ると
大抵「キャーっクモっ、クモ、蜘蛛がいるーー」と
皆怖がる


あんまり蜘蛛がそこらへんの壁や床を歩き回ってるので
「クモ、飼ってるん?」
と昨日は遊びに来てたアッハーちゃんに
真顔で言われたくらいだ


われわれは
ゴキブリやハエハエカカカには
敏感に反応し
ただちにやっつけようと身構えるが


クモには寛容である


「クモはな、悪い虫たべてくれんねんで」
ほんとかうそかわからないが
子どもの頃言われた記憶があるからかもしれぬ
もしくは
助けたらいいことあるかも〜
芥川龍之介さんの「蜘蛛の糸」の影響かもしれぬ


そういってるこの瞬間にも
パソコンの横
ちょこまか動き回るクモ2匹存在


蜘蛛をそんなに怖がらない私でも
大きいヤツはさすがにこわい


今までの人生で最大クモは
中学3年んときだ


夏休みに
東京から大阪豊中へ引っ越してきた


社宅だけど庭がついていた
なかなかよさそうな社宅だ
戦前に建てられたものらしく
古い家だった


いきなり天井から蛍光灯が落下してきたこともあったし


夜中にトイレに起きた母は
「うちにエリマキトカゲがいる…」
と明朝
我々に報告し
それが
立って走って逃げていき
突然
立ち止まったと思ったら
おもむろに振り返り
ナント母と目があったと詳細に証言した


得体のしれないものが住む家であった


そんなある日
古い古い風呂にひとり
のんきにつかっていた
「ビバノンノン」などと鼻歌を歌っていたら
不意に目の前に
大きな蜘蛛が出現した


どれくらい大きなものかと問われれば
体部分だけでも握りこぶしくらいある代物だ


そこから脚がスラリと8方へ
伸びてると想像してもらえば
どれほどでかいか
理解していただけるだろうか


私としては本当は
ギャアアアアアア〜
という心境であったが


なんといっても
花も恥じらう15歳であり
マッパ(真っ裸の略)であったので
怖さより思春期の乙女心がまさり


冷静に湯船から上がり
蜘蛛を刺激しないようにタオルで体を拭き
服をきてから
「キャアアアアアアアア!クモォォォォォォ〜」
と叫んだのだった


その声を聞きつけ
母がやってきて
蜘蛛を風呂から外へ奮闘しながら追い出した記憶がある


ある日
斜め前に住む同級生のマリコちゃんちの前を歩いていたら


彼女の悲鳴が聞こえた


「ギャアアアアア〜お母さんクモぉぉっぉ」


あぁ、あのクモ
今宵はマリコちゃんちに出没したのか


そう思いながら家路についたのだった
まる