patagonia

持ち物に名前
必ず書きます
たとえば作業服
左ポケットに消しゴム
名前書いてます「hayafuji」
右ポケットにメジャー
名前消えぬよう上からテープ貼ってます「ハヤフジ」
左胸ポケットにカッターとUSB
名前書いてるから
置き忘れてもすぐ戻ってくる
「これパソコンとこ置忘れとったで」
右胸ポケットは名刺入れと印鑑
さすがにこれらに名前は書かない
左腕ポケットにシャーペン、ボールペンそして三角スケール
0.05mmのインキングペンで書き書き
それから拾った鉛筆
これにも即名前記入
そのとたんそれはワタシのものになる
お気に入りの文房具
使い始めは名前書きから
そんなある日
岸和田にある職業訓練校から
電話がかかってきた
それは業務連絡だった
通達事項メモし
「それじゃあ失礼します」
電話きろうとしたら
「実は毎日ハヤフジさんにお世話になってるんです」
唐突に電話の主がそう言った
「実習上にハヤフジチサトって書かれたスケールが
置いてあります
それはいつも実習場にあるので使わしてもらってます」
よく聞くと
何故かワタシのスケールがずっと前からあるらしい
どうしてどうやってスケール
岸和田まで行ったのか
「スケールには名前が消えないようテープも貼られてますよ」
ふうんまさしくそれはワタシのものに違いない
知らないうちにワタシのモノが
知らぬところで知らぬ人に使われていた
まるで
見知らぬ土地のパタゴニア
そこを旅する旅人が
ひょっこりワタシを思い出し
思い出したその気持ち
パタゴニアの草原でぽっかりふんわり浮かんでる
そんな風景浮かんできえた
名前が書かれた文房具
それはきっと私の分身
遠く離れた岸和田で
今日も静かに働いている