猫とはなせます。

テイコさんは翔んでる


出会って1年がたつ
年は私より2つ上で
髪は長くゆるやかなパーマだ
散髪はいつも自分でやるそうだ


服はいつもシフォン生地でふわふわしてる
会うたびに同じ服を着ていない
いつも誰か「あんたに似合いそうやで」とくれるんだそうだ
そして必ず「チサトちゃんにもあげよか?」と聞くので断る
服なんて買ったことないと言う


最近は会うたびに
気になるのだが
胸にバッチをしてる


「猫とはなせます。」
バッチには書いてある


テイコさんは四六時中
猫のことばかり考えてる


病気の猫が運び込まれたら
病院に連れて行く
無駄です
無理です
と断られることがあっても
なんとか治療してくれる先生を探すから
阪神間の動物病院をほぼ網羅しているテイコさん


猫のためにお金がかかるから
散髪や洋服なんかにかけるお金なんかないのだ


ゆえに
猫以外の話題になると
だいたい話は聞いてない


テイコさんの店に行くと
子猫や捨猫がいつも何匹かいるが
次に店を訪れた時には
彼らはみなどこかへもらわれていってる


テイコさんは
あらゆるネットワークを駆使し
知恵と体力とお金の限りを尽くし
猫達の里親を探してくるのだ


そんなテイコさんの二十歳の頃の就職活動は
一発で採用が決まったそうだ


我らの時代
女子学生は就職氷河期と呼ばれ
私の例をあげさせてもらえば
およそ200社へ資料請求のハガキをだし
46社受験し
落ちて落ちて落ちて
9月の声をきこうもんなら
自分はもう社会不適応者であると悩むほど
採用は苦しかった


テイコさんの履歴書については
特技:猫と話せること
趣味:猫と遊ぶこと
と記されてたにかかわらずである


テイコさんみてると
思うのだが


人にはそれぞれの使命があって
それを果たす為に生まれてきてるんだ


1つの使命がそれぞれへ与えられており
使命に関係ないことは特に悩まなくてよく
しかしその使命に関しては
悩み傷つき走り回らなくてはならないのではないか


だからきっとそのへんを模索してくと
自分の使命がみえてくるんじゃないかな


そんなこと考える秋の空