金木犀

11月にはいり
寒いのだった


あんなに暑かったのに
あっという間に寒くなった


金木犀も散ってしまった
今年もいい香りだったねありがとう金木犀


ところでこないだ
高校ん時の友人と会う


久しぶりに会うのだが
それがどんなに久しぶりだったかは
思い出せない


「アンタ、…オッサン?」
駅での改札で私の姿をひと目見た彼女は
唐突にそう言った


なるほど昔からの知り合いというのは
忌憚ない意見を発言するものだ


私のチョー短い、ザンギリで、10円ハゲが存在する、
所々段々畑のようなヘアスタイルについて
「いいわ〜」や「にあってるわ〜」
などと褒める人はたいてい最近であった人である


まぁ、とにかく「アンタ…オバハン?」より
「アンタ…オッサン?」のほうが
どっちかといえば褒め言葉であろうと考えよう




その証拠に彼女は
「ちょっと、写真とらして」
とバシバシとオッサンの写真を撮った
「職場でみせるわ〜みんなに」


彼女はすでの25年勤続の会社員である
私はこのような友人がめっちゃうらやましィのだ
なぜなら年金を25年もうすでに納めたからです


花王ソフィーナに勤める彼女は
肌がめっちゃきれいだ
しわひとつなく白く桃色


そして美容業界関係者のなせる業か
私の顔をじっとみつめこう言った
「アンタのおでこにはなんでそんなシワがあるん?」


私の額は広い
顔の4割はある広さだ


そこにしわ横一文字が6本くらい刻まれてる


私「ゆでダコみたいにいつも腹たててるからきっとシワができたんちゃう」
彼女「何にそんな腹たててるん?」
私「子どもがゴミをその辺にほってたら腹を立て」
私「夫が靴下をその辺に脱ぎ捨ててたら腹を立て」
彼女「そのセリフ、高校生ん時のアンタに聞かせたいなぁ」
私「なんで?」
彼女「アンタの部屋はめっちゃ散らかってたやろ」
彼女「家に遊びに行くと足の踏み場がないという理由で」
彼女「いつも妹の部屋に案内されてたで」


あれ、そうだった?
私の部屋は私の部屋、妹の部屋は私の部屋
そんなジャイアンみたいだったかしら


そうして
2人でおしゃべりしてる間にも
彼女の会社用ケータイから
結構こまめに連絡が入ってきた


休みの間も仕事をしてるのだった
彼女もまさに中間管理職のオッサンのように
ばりばり仕事してるのであった


なんでも部下が23人いるらしい


「今は部下とか言わないんやで」
「だから係長とか課長とかもないし」


ふうん
フィールドリーダーとか
チームリーダーとか言うそうだ


それから
これいいよ、と美容液いりハンドクリーム
くれました


ありがとうありがとう
これ塗って
せめて手から美肌になるわ〜




今年の金木犀